養蚕信仰に関する本を読んでいたら、ここ八王子の柚木にも「こかげさん」と呼ばれる、蚕にまつわる<和讃>が伝わっていたとの記述がありました。
帰命頂礼こかげ(蚕影)さん、 蚕の由来を尋ぬれば、 昔、神代のことなるが、 天竺帝の一人姫、 乳房の実母に捨てられて、 邪険なけゑぼ(継母)の手にかかり、 …(以下、略) (「こかげさん」 八王子市柚木) 「東京府におけるオシラさま」(村上清文、『民俗学』五巻十一号) 同じような和讃は、町田市野津田にも「かいこわさん」の名前で伝えられていたそうです。 もっとも、現在では、これらの和讃を知る人はほとんどいないでしょう。 こうした和讃のベースには、養蚕の神さまである<金色姫>の物語が存在しています。 天竺の王さまの娘である<金色姫>が継母の迫害を受け、 最後はウツホ舟で常陸まで流され、 最終的には蚕に生まれ変わる という物語であり、その信仰の拠点となった筑波山の麓にある蚕影神社(および桑林寺)の分祀・分社とともに、関東および福島、長野、山梨にまで広まったそうです。 当然、現在の多摩、八王子、町田から川崎、相模原方面にかけても、蚕影山系の寺社は数多く存在し、信仰にまつわる御影や神像などがあちこちに残されているようですが、和讃の継承はすっかり途切れてしまったようです。 ネットで検索したところ、かろうじて「黒川(川崎)の蚕影山和讃保存会」の名称がヒットしましたが、それ以上の情報はたどれませんでした。 (川崎の日本民家園には、麻生区岡上の東光院の蚕影山祠堂が移築され、かつてはここで和讃も披露されていたようですが、最近の活動状況は不明です。残念ながら、この種の郷土芸能は、後継者不足によって活動停止状態となっているケースが多いようですね)。 「ウツホ舟で神が流される」という展開は<金色姫>に限りませんが、「常陸の国に流されたお姫さまの物語」は、澁澤龍彦も「虚舟」という小説のモチーフとして使っていますね。 ・金色姫 ・白滝姫 ・おきぬさま など、関東周辺には何系統かの養蚕女神の伝承があります。 やはり養蚕と女性の関係は深いんですね。
by terri-o
| 2009-03-13 11:46
| 雑文
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